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最終更新日:2021-10-27

コロナ禍により変化が加速!トラックドライバーの労働環境

トラQ編集部
コロナ禍により変化が加速!トラックドライバーの労働環境
コロナウィルスの世界的な流行により、トラック業界やトラックドライバーの労働環境は大きく様変わりしています。

トラック業界においては、それまでで既に問題となっていた労働力不足や燃料代の高騰、賃金の適正化などに拍車がかかり、2極化が進んでいます。

そして、トラックドライバーの労働環境においては、改善の兆しはあるものの、自粛期間中の配達は想像を絶するものがありました。

これから、コロナウィルスがもたらした変化について、コロナ禍以前から今後の見通しまでを見てみましょう。



【目次】
1.コロナ禍がトラック業界にもたらしたもの
 1-1.コロナ禍以前からトラック業界が抱えていた問題とは?
 1-2.トラックドライバーの不足
 1-3.燃料の高騰
 1-4.値引き合戦による利益率の低下、そして逆選択への転換
2. 自粛生活をきっかけにトラック会社の2極化が進む
 2-1.コロナ禍により、一層変化に拍車が
 2-2.コロナ禍がトラックドライバーの労働環境に与えた影響は?
 2-3.過剰な労働への歯止めはかかるが
 2-4.自粛期間中も配送
3. 忙殺されるトラックドライバー、荷物激減で嘆くトラックドライバー
 3-1.シャワー、トイレが使えない!
 3-2.言われなき偏見や差別!それは家族にも
 3-3.感染の恐怖との戦い、会社から防止のための行き過ぎた指導も
 3-4.トラックドライバーの労働環境の見通しは
4. コロナ禍でも生き残るトラック会社を見極める目を


コロナ禍がトラック業界にもたらしたもの

コロナ禍がトラック業界にもたらしたもの
以前より転換を求められていたトラック業界ですが、今後はトラック会社毎のコロナ禍による変化への迅速な対応力が鍵を握っていると言っても過言ではありません。

では、少し時間を巻き戻して、コロナ禍以前からトラック業界の動きを見ていきましょう。

コロナ禍以前からトラック業界が抱えていた問題とは?


コロナ禍以前から、トラック業界では以下の大きな問題を抱えていました。

・トラックドライバーの不足
・燃料の高騰化
・値引き合戦による利益率低下


トラックドライバーの不足



重労働で、不規則な長時間勤務になりがちなトラックドライバーへの希望者は少なく、労働力の不足は、トラック業界が抱える慢性的な問題でした。

そんな中、ネット通販、フリマアプリの利用者の増加による業務量の増加が追い打ちをかけ、トラックドライバーの不足は深刻化していったのです。

また、労働力不足の結果、トラックドライバーの高齢化問題もささやかれ始め、さらには過剰な労働のため居眠り運転での交通事故が相次ぐなど、マイナスの連鎖が起きていました。

このような事態を重く見た厚生労働省が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を定め、トラックドライバーの労働環境の改善が図られることになりました。

2018年には労働基準法も改正され、労働環境改善の動きが出始めた矢先にコロナ禍が起きたのです。

【参照】国土交通省 トラック運送業の現状等について

燃料の高騰


トラック会社経営に大きな影響を与える燃料代は、近年少しずつ高騰しています。

総務省統計局「ガソリンの東京都区部の小売価格(昭和41年4月~最新月)」によると、ガソリン1L当たりの値段は、1999年4月に97円であったものの、乱高下を繰り返し2008年8月には最高値182円をマーク。

参照:統計局ホームページ/小売物価統計調査(動向編)/東京都区部の価格の動向(ガソリンと灯油)

ここ2、3年は130~150円を推移しており、この20年間で燃料代は約1.3~1.5倍に膨れ上がっていることになります。

燃料代の高騰をそのまま運賃に反映されたら問題はないのですが、トラック業界は値引き合戦の最中であり、運賃値引きと燃料代高騰のダブルパンチでトラック会社の利益確保が難しい状況となっていました。

値引き合戦による利益率の低下、そして逆選択への転換



トラック業界は、バブル崩壊後の経済停滞期に1990年施行の物流二法や2003年の貨物自動車運送業改正などで規制緩和が進みました。

その結果トラック業界は新規参入業者が増加したものの、この規制緩和により競合が激化し、値引き合戦は始まったのです。

どのトラック会社も「空でトラックを走らせるよりは少しはマシ」と安い運賃で運送していました。

赤字受注も少なくなかったため、トラック会社の利益率は低下していきます。

そのしわ寄せはトラックドライバーの人件費にも及び、前述のトラックドライバー不足に拍車をかけることになりました。

そのような状況の中の2014年、ヤマト運輸が法人顧客に対して一斉値上げに踏み切ったことをきっかけに、流れが変わりました。

トラックドライバー不足を楯に、値上げに応じなければ取引解消も辞さないトラック会社が相次ぎ、トラック業界全体が値上げ基調に転換。

その流れはコロナ禍前まで続くことになったのです。

自粛生活をきっかけにトラック会社の2極化が進む

自粛生活をきっかけにトラック会社の2極化が進む
以上のような背景の中、突如コロナ禍がトラック業界を襲い、これまでの業界全体の動きが一旦遮断されることになりました。

ロックダウンする国が相次いだことから、輸出入は大きな影響を受け、トラック業界も例外ではありませんでした。

特に、輸出入及び企業間の配送を主としたトラック会社は、配送量が激減したため、トラック余りの状況になったのです。

経営難に陥るトラック会社が増える一方で、これまでにない繁忙期を迎えるトラック会社もありました。

自粛生活が続くことから、マスクや除菌剤を始めとした衛星用品、自粛生活が長引いたことによる食料品や生活必需品及び、ネット通販やフリマアプリで個人宅への配送を請け負うトラック会社です。

トラック業界の中で2極化が始まったのです。

コロナ禍により、一層変化に拍車が


2020年3月頃に比べ、経済活動も徐々に回復しているものの、コロナ禍以前の状況には程遠く、出口が見えない状況が続いています。

トラック業界としては、一旦遮断された問題の早急な解決が求められています。

トラックドライバー不足、燃料代の高騰などを解決するため、運賃の適正化が最大のポイントでしょう。

2020年4月には国交省より「標準的な運賃」を告示されましたが、トラック業界の想定よりも低い金額であったとの意見もあるようです。

また、一部の業種では未だ配送量が回復していないことから、運賃値下げに踏み切るトラック会社も出始めました。

これまでの値上げ基調は、コロナ禍によって遮断されてしまい、険しい道のりが続くことになりそうです。

トラックドライバー不足に関しては、コロナ禍による経済停滞で、トラックドライバーへの転職希望者も増えているようです。

また、ウーバーイーツのようなギグワークによる労働力の確保も期待されています。

ギグワークとは、短時間もしくは単発の業務ごとに雇用契約を結ぶ働き方のことで、1つの配送毎に契約をすることで、労働者は好きな時に働けるメリットがあります。

一方、今後は労働力の確保だけでなく、AIなどを活用した配送の効率化も必要と言われています。

もし仮に、今後コロナウィルスワクチンが開発され、感染拡大が終息したとしても、コロナ禍以前の生活に戻ることは難しいでしょう。

マスク必須の生活は継続し、テレワークは今後も一層拡大していくことでしょう。

従って、コロナ禍によって引き起こされた配送量の変化も長く続き、このままではトラック業界内での2極化は一層進行することが予想されます。

各トラック会社が生き残るためには、効率的な配送は必要不可欠であり、AIを活用した効率化に着手しているトラック会社も存在します。

コロナウィルスがトラック業界に与えた影響は、それまでの変化に拍車をかけることになった、と言えるでしょう。

コロナ禍がトラックドライバーの労働環境に与えた影響は?


コロナ禍によって、トラック業界は多大な影響を受けました。

そんなコロナ禍の中、配送を続けているトラックドライバーにも影響は及びました。

では、トラック業界同様、少し時間を巻き戻して、コロナ禍以前のトラックドライバーの状況からみていきましょう。

【参照】全日本トラック協会 新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン

過剰な労働への歯止めはかかるが


前述の通り、トラックドライバーは過剰な労働を強いられることも多く、労働環境は良好とは言えませんでした。

いわゆる「3K」(きつい、汚い、危険)な仕事の代表格であり、ややもすると「稼げない」を加えた「4K」の仕事とも言われる程でした。

その結果、トラックドライバー不足が問題となり、政府、トラック業界によるトラックドライバーの待遇が改善されることになったのです。

厚生労働省の定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」や労働基準法改正により、トラックドライバーの過剰な労働への対策が整いましたが、その効果が目に見えることなくコロナ禍が起きたのです。

【参照】厚生労働省 自動車運転者の労働時間等の改善の基準

自粛期間中も配送


コロナ禍によって、トラック業界が2極化したことは解説しました。

そのどちらのトラックドライバーも、コロナ禍で大変な思いをしながらも、「物流を止めない」という使命感で頑張っていました。その例を挙げてみましょう。

忙殺されるトラックドライバー、荷物激減で嘆くトラックドライバー

忙殺されるトラックドライバー、荷物激減で嘆くトラックドライバー
コロナ禍では、マスクや除菌剤がスーパーから姿を消すだけでなく、「トイレットペーパーが不足する」といったデマまで流れ、これらを配送するトラックドライバーは配送に追われる事態となりました。

また、自宅で過ごす人が増えたことにより、食料品や日用雑貨などの配送量も増加。

既にネット通販やフリマアプリにより、個人宅への配送業務はパンク寸前であったことも重なり、これらに携わるトラックドライバーの仕事は激務となっていました。

一方で、輸出入や企業間の配送をしているトラックドライバーは、配送量が激減。

歩合制で仕事をしているトラックドライバーにとっては大ダメージとなりました。

中には「少しでも収入を」ということで、値下げしてでも配送しようとするトラックドライバーもおり、値上げ基調になっていたトラック業界にもブレーキがかかりました。

コロナ禍によるトラック会社の2極化の影響は、トラックドライバーにも及んだのです。

シャワー、トイレが使えない!


大手ガソリンスタンドの中には、トラックドライバーのために無料でシャワールームを開放している店舗がありますが、感染拡大防止策として突然使用中止となったのです。

トラックステーションのコインシャワーだけでは補えず、トラックを停車できるほどのスーパー銭湯なども殆どないため、トラックドライバーたちは体を洗うことさえままなりませんでした。

そんな中でも、トラックドライバーたちは、それぞれの工夫しながら、一生懸命配送したそうです。以下はそんな工夫の一例です。

・赤ちゃんのおしりふきシートで体を拭いた。
・コンビニでカップ麵用のお湯をもらって、タオルを濡らして体を拭いた。
・公園のトイレでシャンプー。
・体中にファブリーズをかけた。


かなり過酷な状況であったことが伺えます。

このような過酷な状況であったことはすぐに伝わり、すぐにガソリンスタンドのシャワールームは解放され、現在では感染拡大防止に注意しながらも、利用できるようになっています。

シャワールームと同様に、コンビニや公園のトイレが使用中止となったことも、トラックドライバーにとっては過酷でした。

トイレも現在では解放されていますが、感染防止のためにトラックドライバーが不衛生な状況に追い込まれる、言わば本末転倒とも言える事態となりました。

言われなき偏見や差別!それは家族にも


特に、ネット通販やフリマアプリで個人宅への配送をしているトラックドライバーは、1日に多くの人と接触することになります。

そのことから、配送する際にトラックドライバーが、あたかもコロナウィルス感染者のような扱いを受けることも少なくありませんでした。

受取人が、荷物に除菌剤をかけるだけでなく、トラックドライバーにかけるケースもあったようです。

また、荷物を玄関に置いて配達する「置き配」という言葉が出てきたのも、コロナ禍からでした。

「コロナウィルスを持ち込むな」といった暴言や、「運転中もマスクしろ」といったクレームなど、トラックドライバーは、言われなき偏見や差別の対象となっていました。

やがて偏見や差別の対象は、トラックドライバーだけにとどまらず、やがてその家族にも及びました。

愛媛県新居浜市の小学校が、コロナウィルス感染防止のため、大阪や東京まで配送したトラックドライバーの子どもに登校させないよう求める事態が起きたのです。

この結果、新一年生を含む小学生3人は、体調に問題はなかったにも関わらず、入学式と始業式を欠席しました。

トラックドライバーの勤めているトラック会社の関係者からの指摘により、すぐに市教委が陳謝することで事態は終息しましたが、コロナウィルス差別の代表的な出来事と言えます。

感染の恐怖との戦い、会社から防止のための行き過ぎた指導も


個人宅へ配送するトラックドライバーは、毎日不特定多数の人と接触するわけなので、どうしても感染するリスクは非常に高くなります。

コロナ禍当初は、マスクが不足しており、自分でマスクも確保も一苦労でした。

また、配送先が自宅だと受取人はマスクをしておらず、その状況で受取人の咳を受けることもあり、日々感染の恐怖と戦いながらの配送でした。

やがて、トラック会社からマスクは支給され、全日本トラック協会よる感染予防マニュアルなどにより、徐々に感染予防対策が採られるようになりました。

しかし、トラック会社によっては、クレームを受けてなのか、トラック運転中もマスク着用を義務づけるなど、行き過ぎた指導も見受けられました。

そもそもトラックドライバーは、基本的に運転中は一人であり、配送時の作業は基本的に屋外です。

しかも、他人との接触は短時間であり、濃厚接触ではないので、感染のリスク自体はそれほど高くありません。

それにも関わらず、トラックドライバーの労働環境がコロナ禍により過酷を極めたのは、周囲の偏見によるものが大きいと言えるでしょう。

トラックドライバーの労働環境の見通しは


過酷ながらも改善の兆しを見せていたトラックドライバーの労働環境は、コロナ禍によって再度過酷な労働環境となりました。

しかし世間の目は変わり、トラックドライバーもコロナ禍の中、感染リスクを覚悟の上で働いてくれているエッセンシャルワーカーとして認知され、偏見や差別は随分と少なくなりました。

衛生面の改善と併せて、トラックドライバーの働きやすい環境作りを意識しているトラック会社も増えており、シャワールームやランドリ―はもちろんのこと、カフェや託児所まで完備しているところもあるようです。

一方、配送量が回復していない現段階では、トラックドライバーの賃金や労働時間に関しては、はっきりとした見通しが立たない状況と言え、トラック会社によって大きく差が出てくることが予想されます。

コロナ禍でも生き残るトラック会社を見極める目を

コロナ禍でも生き残るトラック会社を見極める目を
トラックドライバーにとって、業界全体の動きと併せて、勤めているトラック会社がどのような会社であるか、が大きな問題です。

コロナ禍でも生き残っていけるトラック会社であれば、労働環境や労働時間、賃金もこれから少しずつ改善されていくことでしょう。

では、コロナ禍でも生き残っていけるトラック会社とは、どのような会社なのでしょうか。

必要とされる要素は沢山ありますが、その中でも重要と思われるものは以下と考えられます。

・多くの荷主との取引がある(しっかりとした信頼関係が構築できている)
・幅広い業界に対応できる
・他社と差別化できている
・営業力、交渉力がある


抽象的な要素もありますが、いずれも重要ですので事前にリサーチをすることが必要です。

インターネットでの口コミや同業者、取引先の声などから情報を集めることから始めましょう。

【関連ページ】 トラック会社の選び方「良い会社」と「悪い会社」
この記事の執筆・監修
トラQ編集部 佐藤 哲津斗

運営会社、株式会社しごとウェブの代表。運送業界に貢献できるようにトラQを運営しています。
トラQを使っていただいている皆様の仕事探しのお役に立つことができれば幸いです。

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