最終更新日:2021-10-29
トラック運転手は睡眠時間を確保できるの?
トラック運転手に就職や転職を考える人で、睡眠時間について不安に思う人は少なからずいると思います。
深夜帯に運転することを考えると、夜勤の経験がない人は、日中に睡眠が取れるか心配になるかもしれません。
また、時間帯に限らず激務のイメージがあることから、全体的な睡眠時間の確保についても気になるポイントですよね。
ここではそんなトラック運転手の睡眠時間について、定められている規則や実際の睡眠の現状について紹介していきます。
【目次】
1.トラック運転手の休憩・休息時間の規則
1-1.トラック運転手の拘束時間
1-2.トラック運転手の休息時間
1-3.拘束時間・休息時間の規則と睡眠時間の関係
2.トラック運転手が睡眠不足になる原因
2-1.継続的な疲労の蓄積
2-2.休息時間を睡眠以外の時間に費やしてしまう
2-3.不規則な時間帯での睡眠ができない
3.トラック運転手の睡眠時間の現状
3-1.国土交通省の調査
3-2.人手不足が続くトラック業界
3-3.睡眠状態をチェックする義務について
4.睡眠不足によって高まる交通事故のリスク
5.良い睡眠を取れる環境作りとは?
5-1.労働環境が整った会社を選ぶ
5-2.トラックの中を自分が快適に仮眠できる環境へ整える
5-3.十分な睡眠が取れる生活を心がける
6.上手な仮眠を取るコツとは?
6-1.レム睡眠とノンレム睡眠の睡眠段階
6-2.日中の仮眠と深夜の仮眠
6-3.カフェインの摂取について
7.トラック運転手だからこそ睡眠時間はしっかりと確保しよう
トラック運転手の休憩・休息時間の規則
トラックの運転は、労働時間の限り運転して良いというわけではなく、連続して運転できる時間や休憩について、規則や基準が定められています。
最初に、睡眠時間とも深く関わるそれらの規則や基準を確認しておきましょう。
トラック運転手の拘束時間
拘束時間とは、トラック運転手が運転や積み降ろし、休憩などの仕事に関わるもので、拘束される時間のことです。
この拘束時間は基本的には1日で13時間、最大でも16時間までと厚生労働省によって定められています。
また、1日で15時間を越える拘束は、1週間に2回までと定められています。
そして、この拘束時間のうち、運転する時間は、2日間の平均が9時間となるようにしなければいけません。
更に、1日の中で連続して運転できる時間は基本的に4時間までであり、4時間を越える場合は、少なくとも一回に10分以上の休憩した上で、運転しない休憩時間を30分以上確保するがあります。
上記の条件から見ると運転以外の時間は、1日で4時間ほど確保できますが、実際は積み降ろし等の運転以外の作業が含まれるため、全体の休憩時間はもう少し短くなります。
1日の中で連続して運転する場合は、30分は確実に休憩しなければならないため、全く休憩できないことはありません。
トラック運転手の休息時間
休息時間とは、休憩時間とは別にトラック運転手の業務を終えてから、次の勤務までの自由な時間のことです。
この休憩時間は原則として8時間以上連続した時間となっており、休憩時間が終わるまでは次の運転ができません。
ただし、交通状態や業務内容によって、やむを得ず連続して運転しなければならない場合は、分割休息として休息時間を分割して取れるようになっています。
分割休息は回数と時間が制限されています。
・回数……一定期間(原則として2週間から4週間程度)で、全勤務回数の2分の1の回数が限度
・時間……1日の休憩時間が1回4時間以上で、合計して10時間以上必要
・時間……1日の休憩時間が1回4時間以上で、合計して10時間以上必要
例外はありますが、何日も続いてまとまった休息が取れないことは基本的にないのです。
拘束時間・休息時間の規則と睡眠時間の関係
トラック運転手の拘束時間や休息時間に明確な規則があるのは、労働環境を整えるというのはもちろんのこと、睡眠時間にも密接に関わってきます。
連続した運転は、慣れている人でも集中力の低下や肉体・精神的な疲労を伴うものであり、それによって重大な交通事故に繋がる可能性が高まります。
そのため、厚生労働省は上記のような基準を設けて、休憩や休息を取ることを勧めているのです。
そして、このうち休憩時間については、長時間の運転の疲れを一旦取る仮眠に充てられることが多くなります。
高速道路のパーキングエリアや広い駐車場のあるコンビニなどでトラックが駐車している時には、この休憩で仮眠していることが多いのです。
あくまで長時間の運転からくる眠気の解消なので、根本的な寝不足に効くわけではありませんが、短時間の仮眠は一時的に眠気を解消できます。
一方の休息時間は、仮眠とは別に十分な睡眠を取るための時間として設定されています。
トラック運転手が睡眠不足になる原因
規則や基準としては睡眠時間を確保できるようになっていますが、それでも睡眠を取れない人はいます。
ここでは何が原因で睡眠不足になるかを見ていきます。
継続的な疲労の蓄積
休憩時間に仮眠を取り、休息時間でも長時間睡眠を取ると、多くの運転手は疲れを癒せていると考えられます。
しかし、繁忙期にはその状態を毎日保つことが難しくなり、少しずつ無理をしてしまうことがあります。
その少しの無理が疲労として蓄積していき、いつもの状態に戻っても疲れが抜けずに睡眠不足を感じてしまうのです。
休息時間を睡眠以外の時間に費やしてしまう
規定として休憩時間は8時間以上と定められていますが、その多くを睡眠時間に充てると、プライベートな時間がなくなってしまいます。
トラック内は1人の空間で、ある程度は自由にできると言っても、帰宅後にできることと比べるとやはり限られています。
そのため、休憩時間の多くをプライベートな時間に充ててしまう運転手も一定数います。
特に若いトラック運転手は体力がある分、夜更かしをしたり、帰宅後も寝ないで遊びに行ったりしてしまうことが多いようです。
不規則な時間帯での睡眠ができない
規則や基準の範囲内で休憩・休息があるといっても、業務内容によっては、稼働する時間帯がまばらになることがあります。
そのせいで、通常通りの夜の睡眠は問題なくても、休憩における仮眠や日中の就寝が上手くできない運転手も中にはいるのです。
日光を浴びないように調節する、少し身体を動かすなど、様々な手段で改善できる部分もありますが、体質や体調によってはそれでも寝付けない可能性があります。
トラック運転手の睡眠時間の現状
トラック運転手の休憩・休息の規則と睡眠不足の原因がわかったところで、現状におけるトラック運転手の睡眠時間を見ていきます。
国土交通省の調査
平成29年に国土交通省が行った「ビッグデータ活用による事故防止対策推進事業についての調査」の調査項目の一つに、トラック運転手の睡眠時間が取り上げられています。
参考URL;ビッグデータ活用による事故防止対策推進事業についての調査
その中で地場トラック運転手の平均睡眠時間は、平日で5.3時間、休日で7.0時間となっています。
一方、長距離トラック運転手の平均睡眠は、平日で6.3時間、休日で約7.7時間となっています。
一般的に理想とされる睡眠時間は7~8時間と言われており、この調査においては睡眠時間を十分確保できているように見えます。
人手不足が続くトラック業界
先の項目の調査はあくまで平均値になるので、就いている会社や担当する業務によっては、睡眠時間の現状は変わってきます。
特に近年のトラック業界は地元・長距離に関わらず人手不足に悩まされており、その結果、1人辺りの稼働時間が長くなって、睡眠時間も削られてしまうこともあります。
規則の範囲内であっても最大値で稼働していると、その分疲労は蓄積して、疲労を取るための睡眠時間がより多く必要になってしまうものです。
ただ、そんな人手不足が続く状態だからこそ、睡眠時間を含めた労働環境や福利厚生を整えて、人員募集をしている会社が徐々に増えてきています。
睡眠時間の悩みが原因で仕事を辞められると、また人手不足となってしまうことは、会社側も理解しているところです。
このような現状があるため、トラック運転手の睡眠時間が確保できるかは、会社の人員体制や労働環境に左右される部分があると言えます。
睡眠状態をチェックする義務について
国土交通省は、平成30年の6月1日からトラックやバスの運転手に対して、乗車前に睡眠状態のチェックを受けることを義務付けました。
会社等のチェックする側は、点呼時に顔や表情などを見て運転手の状態を把握し、運転手側は睡眠時間について、正確な時間を伝えることになっています。
また、定期的にライフスタイルや睡眠時間に関する調査を行うことで、睡眠不足にならないように指導を行う場合もあります。
この睡眠状態のチェックが義務付けられたことは、一見すると、睡眠不足への対策が大きく進んだと思える出来事です。
ただ、実際のところは他者の睡眠状態を正確に把握することは難しいものがあり、申告する運転手側も自分では睡眠を取ったつもりでも、実際には完全に寝付けていないこともあります。
義務化自体は、トラック運転手の睡眠に関して良い傾向になっていますが、チェック内容はまだまだ改善していける点が多々あります。
そして、このチェックをしっかり行われているかについても、会社に左右される部分になります。
睡眠不足によって高まる交通事故のリスク
睡眠不足になると、身体が思うように動かなかったり、メンタルが不安定になったりと様々な問題を引き起こしますが、最も恐ろしいのは居眠り運転をしてしまうことです。
長距離トラック運転手の場合は、長時間の運転による疲労や長い時間景色が変わらないことによる視覚的刺激の少なさから、居眠り運転する可能性が最初から高い状態です。
その上で睡眠不足であれば、単純に睡魔に負けてしまい、居眠り運転をする可能性は更に高くなってしまいます。
また居眠りとまではいかなくても、一瞬だけ意識が飛ぶことも起こり得るもので、大型トラックではその一瞬でも命取りになります。
居眠り運転による大型トラックの交通事故は、自身への危険だけでなく、周りを巻き込んだ重大な事故に繋がる可能性が高いのです。
もしもその交通事故が死亡事故に繋がった場合は、社会的な責任を負うことにもなるので、絶対に避けなければいけません。
良い睡眠を取れる環境作りとは?
長距離トラック運転手になって、良い睡眠を取れるようにするには、前もって心がけておくべきことがいくつかあります。
良い睡眠を取れる環境作りをするためにも確認しておきましょう。
労働環境が整った会社を選ぶ
トラック運転手になる前の段階にはなりますが、就職や転職する会社選びは、就いた後の睡眠時間を大きく左右するものです。
業務内容によっては、どうしても仕事が連続してしまうことはありますが、労働環境が整った会社であれば、その後にしっかりと休日が取れるようになっています。
会社が提示している情報と求人サイトやネット上で収集できる情報と合わせて、良い会社を見つけていきましょう。
トラックの中を自分が快適に仮眠できる環境へ整える
長距離トラック運転手は、仮眠がほぼ必須と言えるので、トラック内での睡眠を取ることが多くなります。
この点は会社側も把握しているので、仮眠スペースが付いたトラックを用意したり、電気式毛布や遮光カーテンを備え付けたりしている会社も多いです。
ただ、あくまでそれは最低限の装備であり、もっと快適に過ごすには自分で道具を揃えていった方が良いと思います。
寝やすい枕やアイマスクといった、普段の就寝でも使えるグッズや、温度調整のための扇風機・毛布については、トラック用の製品が数多く販売されています。
追加の装備は仕事が決まった後に購入しても良いのですが、どのような製品があるかは、事前に見ておいても損はないです。
十分な睡眠が取れる生活を心がける
長距離トラック運転手は、ある程度の稼働時間が定まっている会社でも、交通状況や荷主の要望によって不規則な勤務になってしまいます。
そのため最終的には、運動手自身の生活の仕方が重要となります。
眠気を強く感じる日は、いつもより早く就寝するように心がけ、反対に眠くない日は、布団に入って目をつぶるだけでも疲れの取れ方は変ってきます。
睡眠が浅い人は、就寝の直前に食事をしない、スマホの画面を見ないなど、ちょっとしたところを改善することで、睡眠の質が上がることもあります。
仕事の後にプライベートな時間が欲しい気持ちもあるかもしれませんが、それは翌日が休日である時に回して、安全運転のためにも睡眠を取れる生活をしていきましょう。
上手な仮眠を取るコツとは?
最後にあまり仮眠を取ったことがない人のために、仮眠のコツについて見ていきます。
レム睡眠とノンレム睡眠の睡眠段階
人間の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。
レム睡眠は、脳がまだ動いている状態の睡眠で、記憶の整理や定着が行われます。
ノンレム睡眠は大脳が休んでいる状態の睡眠で、身体の回復や脳を休める睡眠の状態です。
加えて、ノンレム睡眠は4段階の睡眠段階に分けられており、段階が高いほど深い眠りについている状態です。
睡眠は目が覚めている覚醒状態から入眠すると、「レム睡眠→ノンレム睡眠1段階→2段階→3段階→4段階→3段階→2段階→1段階→レム睡眠→1段階……」のサイクルを繰り返していきます。
このうち人間が睡眠を取って気持ちの良い目覚めとなるのは浅い睡眠の時であり、ノンレム睡眠からノンレム睡眠の1~2段階の状態が当てはまります。
そして、ノンレム睡眠の2段階は入眠から20分後に訪れ、ノンレム睡眠の4段階を経た後のレム睡眠は90分後に訪れます。
日中の仮眠と深夜の仮眠
仮眠を取る際もこのレム睡眠とノンレム睡眠の段階を参照して睡眠を取ると、寝覚めがすっきりします。
日中の仮眠では眠気を飛ばすことが目的となるため、ノンレム睡眠の2段階での目覚めが当てはまり、20分前後の仮眠が望ましいのです。
深夜の仮眠ではある程度の疲労回復や脳を休めることが目的となるため、ノンレム睡眠を経たレム睡眠がくる90分前後の仮眠が適しています。
休憩時間が確保できる場合は、日中でも90分前後の睡眠を取って身体を休めることも良い手段です。
人によって寝付くタイミングは変ってきますが、この時間を基準に目覚ましを設定しておくことをおすすめします。
カフェインの摂取について
カフェインは眠気を飛ばすために重宝されるものですが、カフェインの摂取は根本的な眠気対策にはなりません。
カフェインの効果は最大で4時間ほど持続するものですが、カフェインの摂取を続けた後で継続してカフェインの摂取を止めると、急な眠気が生じることがあります。
これはカフェインクラッシュと呼ばれる状態であり、カフェイン切れを起こして、摂取前の疲労や眠気が戻って来てしまう状態を言います。
そして、この状態を避けるために、カフェインを取り続けてしまうと、今度は普通の睡眠を取る際の寝付きが悪くなってしまい、翌日には睡眠不足になるという本末転倒な事態になってしまいます。
カフェインの摂取は十分な睡眠を取った上で、その運転中で眠くならないために摂取すべきもので、蓄積した眠気を飛ばせるものではないのです。
仮眠とカフェインの摂取はその特性を十分理解して、上手く取り入れていきましょう。
トラック運転手だからこそ睡眠時間はしっかりと確保しよう
長距離トラック運転手の睡眠時間は、規則や基準ではしっかりと確保できるように定められており、睡眠状態のチェックが義務付けられています。
しかし、就いている会社や荷主の要望によっては、しっかりと睡眠時間が確保できない場合も少なからずあるのが現状です。
そんな中でもトラック運転手自身が工夫することで、良い睡眠や快適な仮眠ができる部分はいくつもあります。
長距離トラック運転手だけではありませんが、睡眠不足による交通事故は、大きな被害になる可能性を秘めているものです。
そうならないためにも睡眠時間を確保できる生活や仮眠の仕方と環境を整えていきましょう。
この記事の執筆・監修
トラQ編集部 佐藤 哲津斗
運営会社、株式会社しごとウェブの代表。運送業界に貢献できるようにトラQを運営しています。
トラQを使っていただいている皆様の仕事探しのお役に立つことができれば幸いです。